キーポイント
- オーストラリアの金融規制当局であるオーストラリア証券投資委員会(ASIC)は、2022年2月にブロックチェーンベースのCHESS代替プロジェクトについて誤解を招く発言を行ったとして、ASX Limitedに対して連邦裁判所に民事訴訟を起こした。
- ASICは、ブロックチェーンのアップグレードプロジェクトが2023年4月の本稼働に向けて「順調に進んでいる」というASXの主張は、当時プロジェクトが計画通りに進んでいなかったため、誤解を招き、欺瞞的であったと主張している。
オーストラリアの金融監視機関であるオーストラリア証券投資委員会(ASIC)は、最大の市場運営会社であるASXリミテッドに対し、ブロックチェーンを利用した清算機関電子登録システム(CHESS)代替プロジェクトに関する誤解を招く記述の疑いで法的措置を取った。2024年8月13日に連邦裁判所に提出されたこの民事訴訟は、ブロックチェーン技術を用いたシステムのアップグレードを断念したASXの継続的な精査における重要な進展となる。
ASICの主張と懸念
オーストラリアの規制当局の裁判の中心は、ASXが2022年2月10日に発表した声明にある。ASICは、ブロックチェーンを活用したCHESSの代替プロジェクトが2023年4月の稼働に向けて「順調に進んでいる」とするASXの主張は、誤解を招く欺瞞的なものであったと主張している。規制当局によると、これらの声明は、プロジェクトがASXの発表したプロジェクト計画に沿っており、将来のマイルストーンを達成する予定であることを暗示していた。
ASICのジョー・ロンゴ委員長は、「ASXの発言は、わが国市場の健全性に対する信頼の根幹に関わるものだ。私たちは、これはASXの取締役会と当時の上級幹部による集団的な失敗であったと考えています」と述べた。
オーストラリアの規制当局は、発表当時、プロジェクトは計画通りに進んでおらず、ASXは将来のマイルストーン達成を示唆する合理的な根拠を欠いていたと主張している。ASICは、2022年2月10日時点の実態は、ASXの発表に反してプロジェクトは「順調に進行」していなかったと主張している。
市場の信頼と参加者への影響
ASICは、ブロックチェーンをベースとしたCHESS代替プロジェクトの重要性を強調し、オーストラリア経済の運営にとって基本的なものであると述べた。規制当局は、企業や市場参加者が自らの意思決定や投資を行う際にASXのコミュニケーションに依存しているため、ASXの声明は市場全体に広範な影響を及ぼすと強調した。
2022年11月のブロックチェーン・アップグレード・プ ロジェクトの遅延とその後の一時停止は、プロジェクトの進捗 状況や稼働予定日に関する保証を信頼していたASXと市 場参加者に多大なコストをもたらしたと報じられている。ASICは、プロジェクトに関する効果的かつ透明性のある管理・伝達が行われなかったことで、投資を誘致する市場としてのオーストラリアの信頼が失われる可能性があると強調した。
ASXの対応と今後の展開
この訴訟手続きに対し、ASXは事態の深刻さを認める声明を発表した。ASXのヘレン・ロフトハウス常務取締役兼CEOは、「我々は、これらの訴訟の重大性と深刻な性質を認識している。我々はASICの調査に全面的に協力し、現在、疑惑を慎重に検討・検討している」と述べた。
ASXは、この2年間で組織として大きな進歩を遂げたと述べ、前進し顧客をサポートするというコミットメントを強調した。継続開示義務のもと、同社は市場に情報を提供し続け、2024年8月16日に24年度の業績を報告する予定である。
より広範な背景とASICの強制措置
ASXに対する今回の法的措置は、オーストラリアにおけるマーケット・インテグリティ規則の遵守を徹底するためのASICの広範な取り組みの一環である。2024年初め、ASXはASICによるマーケット・インテグリティ規則の遵守に関する調査の結果、105万ドルのペナルティを支払った。オーストラリアの規制当局は、最近も「ポンピング・アンド・ダンピング」スキームやコモディティ市場の操作未遂に対して行動を起こしている。
法的手続きが展開されるにつれ、この訴訟の結果は、オーストラリアの市場運営者と上場企業に重大な影響を与える可能性がある。金融セクターにおけるプロジェクト管理の透明性と市場コミュニケーションに関する期待を再形成する可能性がある。また、オーストラリア市場における重要な金融インフラプロジェクトにブロックチェーン技術を導入することの課題とリスクについても疑問を投げかけるものである。